「姿三四郎」を訪ねて

「姿三四郎」のイラスト(藤田進と月形龍之介)

て、ブログがすっかりロケ地めぐりの「蔵出しシリーズ」と化していますが、今から3年前の秋から冬にかけて、黒澤明の監督デビュー作「姿三四郎」(1943)のロケ地をめぐり歩いてきましたので、その時のことを書こうと思います。

明治時代の柔道草創期、「柔の道」に人生をかける青年、姿三四郎の活躍を描いた「姿三四郎」は、なんといってもそのロケ撮影に目を瞠らされる作品です。スケール感のあるロケーションや大掛かりなオープンセットといえば、のちの黒澤映画に共通する特長といっていいものですが、それもみな、この処女作が嚆矢。いやそれどころか、姿三四郎と宿命のライバル、檜垣源之助の決闘を描いた箱根の仙石原で撮影されたクライマックスの映像は、全三十作を数える黒澤作品の中でも至高といっていい、まるで天地自然すらも味方につけたかのような、神がかったところがあります。

このあたりのことは以前、「姿三四郎」の記事に書いたので繰り返しませんが、畳の上での柔道場面がいずれもいまひとつリアリティに欠ける「姿三四郎」にあって、その格闘映画としての魅力のほとんどはこのロケ撮影に負っている、といっても差し支えないんじゃないでしょうか。

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「裏切りのサーカス」を訪ねて

「裏切りのサーカス」のイラスト(ベネディクト・カンバーバッチ)

ンドン出張のついでに「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」(2015)のロケ地めぐりをしよう(前回の記事)、と思いついたそのすぐあと、実はもう1本、頭に浮かんだ映画がありました。それが、トーマス・アルフレッドソン監督、ジョン・ル・カレ原作のスパイ・スリラー、「裏切りのサーカス」(2011)。なぜこんな邦題を付けたのか、日本公開から8年経ったいまでも違和感ありまくり(原題は原作名と同じ、「ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ」)のこの作品もまた、その舞台のほとんどがロンドンです...って、おお、いま思えばどちらもスパイ映画ではないですか。そしてそういえば、「007 スカイフォール」(2012)や「007 スペクター」(2015)もまた、ロンドンがロケ地ではありませんか。

そう、MI6のお膝元であるロンドンは、世界で最もエスピオナージュが似合う街なのですね(たぶん)。というわけで今回は、前回記事の姉妹編。「『裏切りのサーカス』を訪ねて」であります。

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「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」を訪ねて

「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」のイラスト(トム・クルーズ)

ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション」(2015)は、これまで6作作られている「ミッション:インポッシブル」シリーズの最高傑作です(私決め)。回を重ねるごとにエスカレートする、バカバカしいほどすごいアクション。このシリーズのお楽しみ、世界各地を股にかけたダイナミックでスケール感のあるロケ撮影。お馴染みのメンツに加え、魅力ある新キャラの登場。そしていつも通りのわかりやすくテンポよいドラマ展開と、これまたこのシリーズのお馴染み、観客に向けて仕掛けられただましのテクニック――とまあ、すべてが二重丸の出来栄えで、何度観ても面白く、観るたび気分が盛り上がる映画です。

本作のロケ地は、クアラルンプール、ハバナ、ウィーン、カサブランカ、そしてロンドン。中でもロンドンはクライマックスの舞台ともなっていて、この映画を観ると、ロンドンの風景と風物がひときわ強く印象に残ります。というわけで、一昨年の秋に出張で5日間ほどロンドンに行くことになったとき、オフ時間のお楽しみとして真っ先に思いついたのが、この映画のロケ地めぐり。ロンドンを訪れるのは四半世紀ぶりだったにもかかわらず、何はさておいても映画のロケ地めぐり。我ながら病膏肓にいたるとは、まさにこのことであります。

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「幸福の黄色いハンカチ」を訪ねて

「幸福の黄色いハンカチ」のイラスト(倍賞千恵子)

日の経つのは早いもので、なんとブログの更新が1年半ぶりになってしまいました。というわけで、今さらにもほどがあるのですが、三年前の夏に旅した「『男はつらいよ 寅次郎相合傘』を訪ねて」「『遥かなる山の呼び声』を訪ねて」に続く北海道ロケ地訪問シリーズ三部作の最終回、「『幸福の黄色いハンカチ』を訪ねて」であります。

北海道を舞台にした山田洋次監督、高倉健主演のロードムービー、「幸福の黄色いハンカチ」(1977)。網走で出会った若い男女と中年男が、阿寒、陸別、帯広、新得、砂川そして夕張へ、北の大地を東から西に向かってクルマを走らせていく映画の旅路とは逆に、私のドライブは道南から道東に向かい、そして道南へと戻ってくるものでした。そんなわけで映画とは訪れた順序がまるで異なっているのですが、とりあえず旅の行程に沿って、「幸福の黄色いハンカチ」のロケ地の今(といっても3年前ですが)をご紹介したいと思います。

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「遥かなる山の呼び声」を訪ねて

「遥かなる山の呼び声」のイラスト(高倉健)

海道が舞台の映画といってまず思い浮かぶのは、山田洋次監督、高倉健主演の「遥かなる山の呼び声」(1980)です。道東の美しくも厳しい自然を背景に、牛飼いを営む母ひとり子ひとりの親子と流れ者の男が知り合い、徐々に心を通わせながら、やがて強い絆で結ばれていくさまを悠揚迫らぬタッチでつづった、山田洋次監督の最高傑作(私決め)。

この映画の何がいいってすべていい、と以前に書いたことがありますが、私にとってこれほど感動で胸がいっぱいになった映画はほかにありません。いったいどれほど感動したかといえば、映画を観てから数年後、18歳のときに初めて北海道を訪れ、まず目指したのがこの映画のロケ地だった、というくらいのもので、そしてその感動がどれほど後を引いたかといえば、8年前にロケ地を再訪し、そして昨夏、三たび訪れてしまったというくらい。

というわけで、いつの間にか1年以上が過ぎてしまいましたが、「『男はつらいよ 寅次郎相合い傘』を訪ねて」に続く北海道ロケ地めぐりシリーズ第2弾、「『遥かなる山の呼び声』を訪ねて」であります。

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管理人: mardigras
ジョウビタキ
 

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続・この映画の原作がすごい!(上)
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その後のシネマ・イラストレイテッド in TSUTAYA
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「ツィゴイネルワイゼン」を訪ねて(その2)
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