アレンジ
幸福の黄色いハンカチ
お前たち、待っててくれたンか。
果
たしてこれまで何度観たかわからない、北海道を舞台にした山田洋次監督のロードムービー、
「幸福の黄色いハンカチ」
(1977)。いや~、面白い映画は何度観ても面白い、というより年を経るごとに、ますます好きな映画ばかりを繰り返し観るようになってきた、今日この頃ではあります。
中学生の頃に初めて観て以来、30余年。この映画のいったいどこにそんなに惹かれてやまないのかといえば、それはなんといっても、高倉健と武田鉄矢と桃井かおりのオン・ザ・ロードのあれこれが、北海道のクルマ旅だからこその楽しさに満ち溢れた、旅ごころを刺激してやまないものであることです。「幸福の黄色いハンカチ」は、いざその気になれば自分でもできる(そしていまとなっては何度かやったことのある)、憧れの北の大地をクルマで旅する醍醐味を、等身大で疑似体験(あるいは追体験)させてくれる映画なのですね。
由緒正しいロードムービー、「幸福の黄色いハンカチ」(以下ネタバレ)
旅
(移動)の過程で起こる、さまざまな出来事を描くことに眼目を置いた、いわゆる"ロードムービー"と呼ばれるジャンルの作品は、そのテーマや内容如何に関わらず、ただ"ロードムービー"であるというだけで、わくわくしてしまうところがあります。目的地を目指して旅すること、あるいは見知らぬ土地を当てもなしに彷徨(さまよ)ったりすること、イコール未知なる人との出会いや予期せぬ冒険といった非日常的なイベントが、ある程度約束されているともいえるわけで、しかもたいていは、その旅の進み具合に、主人公の成長、あるいは旅を共にする者同士の相互理解、友情の深まりといった、高揚感を喚起せずにはおかない内的ドラマの進展がわかりやすくリンクしていたりもして、要するに"ロードムービー"は、お話を盛り上げる要素とカタルシスのタネが予め内包された、実に都合のよいフォーマットなのですね――というのは以前、
「ミッドナイト・ラン」
(1988)の記事に書いたことです。
「幸福の黄色いハンカチ」の主人公は、オンナにふられて町工場を辞め、退職金をはたいて買った新車で東京から北海道へとやってきた若者、欽也(武田鉄矢)。これまたオトコに浮気され、北海道へと傷心旅行にやってきた内気な女性、朱美(桃井かおり)。そして6年前、ささいなことから人を殺めて網走刑務所に服役し、刑期を務め上げ、ようやく娑婆に出てきたばかりの元炭鉱夫、島勇作(高倉健)。
東京からフェリーで釧路に上陸した欽也は、道東を北上し、網走の駅前で朱美のナンパに成功すると、立ち寄ったオホーツクの海辺で、ひとりぽつねんと佇む勇作と知り合います。服役中、自らの意思で半ば無理やり別れたはずの元妻、光枝(倍賞千恵子)を忘れられない勇作は、出所を知らせるはがきを投函しておきながら、そのくせ彼女がいる(はずの)夕張へと向かうことに逡巡し、これから阿寒温泉に行くという欽也とアケミに誘われるがまま、若者たちの旅の道連れとなります。
こうして、それまで縁もゆかりもなかった若者二人と中年男の、三泊四日にわたる北海道横断のクルマ旅が始まります。しょせん行きずりの関係でしかない彼らは、旅の途上、ただひたすら朱美といたすことしかアタマにない、
"さかりのついた犬"
(by 勇作)のような欽也の粗忽で軽薄にもほどがある言動に、幾度もばらばらになりかけながら、しかしぎりぎりのところで縒りを戻し、網走から阿寒、陸別、足寄、帯広、新得へと、西に向かってじりじり旅を続けていきます。そして狩勝峠を越えたあたりで、ひょんなことから勇作の過去と旅の事情が明らかになると、欽也と朱美、二人の若い男女の"旅するため"(by
「モーターサイクル・ダイアリーズ」
(2004)のチェ・ゲバラ)でしかなかった旅に、ひとつの大きな目的が生まれます。
人が人を愛することの重さに打たれ、その尊さに感動した二人。彼らは、生きるのが下手くそな中年男の人生に奇跡が訪れることを願い、その行く末を見届ける決心をします。6年の歳月を経て、果たして別れた妻はいまでも男の帰りを待っているのか。かくて、欽也と朱美は、己を待ち受ける絶望の予感におののく勇作を励ましながら、心をひとつにして一路、夕張を目指していくのであります。
――とまあ、欽也と朱美と勇作の三人が出会い、旅の途上で何度も袂を分かちそうになりながら、結局また一台のクルマに乗り込み、旅を続けることになる展開のうまさ。あるいは愛してるとか好きとかではない、
"一種のプレイ"
(by 欽也)に興じていた欽也と朱美の心が、ひとつの感動を共有したことによって、ぴたりと重なり合っていくその呼吸。そして言うまでもなく、そんな旅の終わりに待ち受けていた、あざといまでに美しく、完璧にもほどがある大団円。
ひとつのエピソードが次なるエピソードの伏線となり、時に行きつ戻りつしながら、網走から夕張に向かってジグザグの軌跡を描いて進むマツダ・ファミリアの経路には、見知らぬ中年男を触媒として相互理解を深め、真の愛に目覚めていく二人の若者の成長、そして人生に絶望しかけた中年男の心の揺れ、この二つの波長が見事に同期して、つまり「幸福の黄色いハンカチ」は、いかにもロードムービーらしいお約束のプロットにお約束のエモーションがぎっしりと詰まった、まさにロードムービーの王道をゆく作品なのですね。
高倉健と武田鉄矢のケミストリー
「
幸福の黄色いハンカチ」は、高倉健と倍賞千恵子が初めて共演した映画です。その後、
「遥かなる山の呼び声」
(1980)、
「駅-STATION」
(1981)と三たび実現することになる、この二人のカップリングが日本映画史上における最高のケミストリーであったことは、今さら語るまでもない真理としてさておくとして、高倉健と武田鉄矢、この二人の絡みがこれまたすさまじくポジティブな化学反応を起こすものだったことも、山田洋次監督のさすがの慧眼というほかありません。
そもそも背中にスミを背負(しょ)った人斬りヤクザの残像を持つ健さんを、殺人の罪を犯した過去を持つ、市井の人物像に重ね合わせてみせたこと自体、高倉健という希代の大スターを時流の波間から救い上げた、日本映画史上に残る山田監督の大発明だった――というのは
「夜叉」
(1985)の記事に書いたことです。
網走の食堂で、コップをおしいただくようにして6年ぶりのビールを呑み干し、くっと肩を回してラーメンをすすってみせる後姿(
「この映画のあれが食べたい」
参照)。あるいは
「聞いとんのか、コラ」(怒)
とドスの効いた声音でチャラけた欽也を説教してみせる、さすがの凄味。そして一目惚れした女と半年も口をきくことができず、その働く姿を
「ただすがるような気持ち」
で目で追う思いつめた表情や、自分に子供ができたと知ってにっこり微笑んでみせる、五月晴れのようにすがすがしい笑顔。そんな、高倉健の最良ともいうべき演技の魅力が全編に横溢する、その代名詞ともなった"不器用な男"のイメージとその後のフィルモグラフィの方向性を決定づけた記念碑でもあるこの映画にあって、それまで役者としての実績がまったくなかった武田鉄矢がその相手役、というより実質的なドラマの主人公として起用されていたこともまた、思えばすごいことです。
狭くて汚いアパートに寝転び、目をウルウルさせて鼻汁を啜り上げながら、別れたオンナをひとりぐちぐちと責め苛む、そのみじめで不細工な情景の圧倒的リアリティ――映画初挑戦の武田鉄矢が、いざふたを開けてみればとてつもない芸達者であったことは、もう冒頭の一幕からして一目瞭然です。
短足がに股(その体型を生かし、この映画で武田鉄矢は実に6回も"器用に"コケてみせる)、すきっ歯のチンパンジー顔にサラサラの長髪をなびかせた、ほとんど不気味ですらある、ただひたすらダサくてカッコ悪いビジュアル。そして観ているこっちが恥ずかしくなる、そのあまりにリアルな人間白帯っぷりと、とはいえ隙だらけのその言動に滲む、どこか憎めない、愛すべきお人好しの雰囲気。
とまあ、武田鉄矢は、高倉健のストイックで男らしく骨太な佇まいの引き立て役として、これ以上望めないほどの個性と演技力の持ち主だったのであり、いやそれどころか高倉健の単なる引き立て役では収まりきらない存在感を放っていて、要するに、武田鉄矢の珍しい生き物を見物するかのような味わいもまた、高倉健によって激しく引き立てられていた、というべきなのでしょう。なにせ、そう、例えば「遥かなる山の呼び声」の吉岡秀隆くんと高倉健の関係がそうであったように、場面によっては、ほとんど武田鉄矢が高倉健を食ってしまってさえいるのですね(例えば腹を下した欽ちゃんの情けなさに勇作が堪えきれず笑ってしまうところなど、思わず武田鉄矢の勝ち、と言いたくなってしまう)。
実世界の楽屋裏はいざ知らず、少なくともスクリーンの上で、武田鉄矢に高倉健のオーラにびびってたじろぐ位負けの気配はまったく感じられません。そして、そんな武田鉄矢の怖いもの知らずともいうべき、遠慮のないオレがオレがの存在感こそが、「幸福の黄色いハンカチ」に、ともすれば健さんのプロモーション映画のようでもあるその後の一連の降旗作品とは一線を画す(つまり"健さん映画"として括りたくなる作品群とは次元の異なる)、より普遍的でオールタイムな名作としての力とバランスを与えていると思うのですね。
感動強制装置としての「黄色いハンカチ」
「
幸福の黄色いハンカチ」のオープニングにクレジットされている原作は、米国のコラムニスト、ピート・ハミルがリーダーズ・ダイジェストに寄せた、わずか数ページのコラム、
「黄色いハンカチ」
。
DVD収録の山田監督インタビューによれば、映画の着想は、そもそも米国のポップ歌手、ドーンが1973年にリリースしたヒット曲、
「幸せの黄色いリボン」
に得たのだそう(コラムも歌も同じ米国の民間伝承を下敷きにしている)。それがなぜ、ピート・ハミルのコラムが原作としてクレジットされるに至ったのか、は話がずれるのでさておくとして(上記のインタビューで山田監督が語っています)、それにしても、そのコラムに描かれた、ある中年男の人生のほんの一瞬のスケッチに過ぎない一幕の情景が持つ、読み手の心を揺さぶらずにはおかない力のなんと強いことか。
ニューヨークからフロリダに向かう長距離バスに乗り合わせた、若者たちとひとりの初老の男。若者たちは、旅のつれづれに、男が四年間服役した刑務所を出所したばかりで、これから家に戻るところであることを訊きだします。男は三年前、妻に待つのがいやなら別れてもかまわないという手紙を書き、それ以来妻からの音信が途絶えたこと、そして保釈が決まった先週、妻に宛てて、再びこんな手紙を書いたことを、若者たちに語って聞かせます。
――もしおまえが今でもおれを迎え入れてくれるなら、町の入口にある大きなオークの木の枝に、黄色いハンカチを一枚結び付けておいてくれ。そしたらおれはバスを降りて家に帰る。でも、もしおれに会いたくないならなにもしなくていい、おれはそのままバスに乗って町を走り抜けるから。
若者たちの心は男と一体となり、町が近づくにつれ、居てもたってもいられなくなります。もはや窓の外を見ることのできない男に代わって、行く手にオークの大木が現れるのを待ち受ける若者たち。やがて彼らの目に映る、無数の黄色いハンカチがはためく一本の大木。バスに若者たちの歓声が満ち、男はバスを降りて家路につきます。
というのが原作のあらまし――というよりすべてなのですが、この、まさしく映画の大雑把な骨子としか言いようのない、ほんの6ページの掌編を読んだときは、たっぷり肉付けされて厚みを増した映画と同じくらい、いやそれ以上と言っていいくらい、心を激しく揺さぶられてしまったものです。
何年にもわたって、ただひたすらひとりの女を思い続けた男。男の帰りを、ただひたすら待ち続けた女。生きるのが上手とはとても言えない、男と女の誠実な愛の在りようと、それを象徴してはためく、黄色いハンカチの鮮やかにもほどがあるイメージ。そしてそんな人生の奇跡に偶然にも居合わせた、幸運な若者たち。
この、平凡な男女の人生に訪れた一瞬の愛の局面を描いた情景には、人として感動せずにはいられない、シンプルであるからこそ何ものにも侵されようのない、固い結晶のような力強さと神々しいまでの美しさがあります(この二人が、この先、幸せに暮らしていけるのかどうかなんてことは、この際まったく関係ない)。かてて加えて、読者の分身ともいえる若者たちがそこにいることによって、私たち自身もまた、否応なしに、この人生の奇跡に立ち会う幸運に恵まれたような気にさせられるという、その、小憎らしいにもほどがある構図。
原作を読んで以来、映画の感動の源泉は、つまるところ、このアウトラインにあったのであり、配役がどうとか、演技がどうとか、演出がどうとか、細かいストーリーがどうとかなんてことは、実はほとんど関係なかったのではないか――なんてことをぼんやり思っていたのですが、つい最近、「幸福の黄色いハンカチ」の米国里帰りともいうべきリメイク作、
「イエロー・ハンカチーフ」
(2008)を観て、それがまったくその通りだったことを確認しました。
たとえば佇まいのまったく異なる高倉健とウィリアム・ハート。佇まいどころか、その役柄の性格からしてまったく異なるキャラ設定がなされた倍賞千恵子とマリア・ベロ、桃井かおりとクリステン・スチュワート、そして武田鉄矢とエディ・レッドメイン。現代のアメリカを舞台にリアリティのあるドラマを作ろうとすれば、いずれのキャラ変更もうなずけるものですが、しかしそれにしても、(やたらと細部のドラマ展開がオリジナルに忠実であるにもかかわらず、)オリジナルとは似ても似つかない、信じられないほど盛り上がりに欠ける終盤の展開と、無造作にもほどがある、インパクト不足のクライマックスのロケーションとセット。そして一つのカウンティの中をぐるぐる走り回っているかのような、メリハリのない、オン・ザ・ロードの風景。
とまあ、「イエロー・ハンカチーフ」は「幸福の黄色いハンカチ」と比べ、決して出来がいい作品とは思えないのですが、それでもそんなこととは関係なしに、終幕の感動の大波は、やっぱり激しく押し寄せてくるのですね。
さあ、出かけよう、ファ~ミリア~♪
さ
て何が楽しいって、北海道をクルマでぐるぐる旅してまわることほど楽しいことは、この世にそうそうないのであります。日本離れした広大なスケールでありながら、さりとて行けども尽きない無限の広さがあるわけでもなく、端から端まで数日あれば走りきることのできる、クルマで旅するのにうってつけといっていい、実にほどよく閉じた空間。「幸福の黄色いハンカチ」は、この、北海道クルマ旅のエッセンスが凝縮された映画なのであり、「幸福の黄色いハンカチ」にいざなわれ、欽ちゃんのようにフェリーに愛車を載せて北の大地へと旅立った若者は、古今東西、おそらく山のようにいたことでしょう(かくいう私もそのひとり)。
いざフェリーが港に接岸し、いよいよ下船の瞬間を迎えたときの昂揚感とほんのちょっぴりの緊張感。信号もほとんどなければ対向車もめったに来ない道を、地平線に向かってただひたすらクルマを走らせていく爽快感。その途上に見つけた観光地にふらりと立ち寄ること自体が楽しい気まぐれな観光地巡りや、峠に立って遥かに広がる空と大地を見晴るかす解放感。あるいはロングドライブに暮れた一日を締めくくる温泉に、行く先々で味わう北海道の味覚。そして言うまでもなく、旅ならではの見知らぬ人との出会いと触れ合い、心に滲みる親切と人情。とまあ、欽也と朱美の二人が旅の途上で体験するあれこれは、実際の北海道のクルマ旅で誰もが体験する悦楽そのものといっていいものです。
これまでさまざまなかたちで北海道を訪れてきましたが、振り返って思うことは、北の大地の魅力を十二分に堪能するには、結局のところ、クルマであちこち回る旅に勝るものはないということです。せせこましい旅程に縛られることなく、風の向くまま気の向くまま、右を向いても左を向いても大自然の広がる景色を悠然と眺めながら、町から町へと移動していく、点と点を結んだ線の旅。それは、ピンポイントで観光地を訪れても決して味わうことのできない、移動という行動自体に官能とカタルシスが内包された、北の大地のロマンとスケールそのものを体感する、まさに北海道ならではの旅のかたちなのであります。
実はこの夏、5年振りに北海道を訪れました。羽田から旭川空港までジェット機でひとっ飛び、道央の美瑛にほど近い白金温泉に宿を定めて、レンタカーで旭川と富良野周辺の観光スポットを訪れて回る5泊6日の旅は、せっかくの北海道だというのに、しかも旭岳にも登ったし、麓郷にも行ったし、忠別川でニジマスも釣ったというのに、最初から最後まで、どこか物足りなさがつきまとうものでした。
この旅行中、まがりなりにもドライブらしいドライブといえば、富良野から金山湖を経て、
「鉄道員(ぽっぽや)」
(1999)のロケ地である根室本線の幾寅駅(映画では幌舞駅)に足を運んだくらいのもので、とはいえ白金温泉から幾寅駅までは片道ほんの70km、しかも通りすがりに立ち寄るのではない、ホテルに旅行鞄を置いて行って来いのドライブでは所詮、オン・ザ・ロードの気分が出るはずもありません。いやそもそも、北海道を飛行機で訪れるところからして既に味気ないのであり、やはり欽ちゃんのようにフェリーで海路を丸一日かけていく、あるいは陸路を延々ひた走り、青森からフェリーで渡る、とまあ、移動に時間と労力をたっぷりかけてこそ、北の大地を旅するありがたみと悦びはいや増すのではないか――と、そんな贅沢極まりない時間の使い方が、勤め人の身の上でそう容易くできるはずもないことを承知の上で、詮無いことを思ったりするのであります。
ところで幾寅駅を訪れた帰り道、ものの見事にネズミ捕りに引っかかり、スピード違反で捕まってしまいました。ところは奇しくも映画の中で高倉健が検問にひっかかり、無免許運転で捕まった狩勝国道(この場面は、実際は金山湖沿いの道で撮影された――パンフレットより)。というわけで千載一遇のチャンス到来、路肩にクルマを停め、窓越しに免許証の提示を求められたときは、おまわりさんを発止と見つめながら、つい、
「持ってません!」
と言ってしまいました――というのはさすがにウソです。
山田洋次の北海道
北
海道を舞台にした映画といえば、やっぱり山田洋次なのであります。「幸福の黄色いハンカチ」や「遥かなる山の呼び声」をはじめ、
「家族」
(1970)、
「同胞」
(1975)、そして
「男はつらいよ」
(1969-1995)シリーズの数々。それがどこであれ、高羽哲夫が撮影した北海道には、ともすれば見過ごしてしまいそうな、何てことのないローカルな風景に、しみじみとした詩情がじんわり滲み出て、いかにも日本的な情緒が漂います(いや北海道だからというより、日本全国津々浦々、山田作品の映像に共通する味わいといっていい)。
たとえば「幸福の黄色いハンカチ」に記録された、そこに暮らす人々の生活の息吹が確かに伝わってくる夕張の炭鉱住宅の情景や(
こちら
のロケ地探訪記参照)、寂れかかった歌志内の炭鉱町の点景。あるいは「遥かなる山の呼び声」の全編にわたって展開する四季折々の美しい牧場風景に、
「男はつらいよ 寅次郎忘れな草」
(1973)の寂寥感漂う釧路湿原や、網走の港出船の光景にたゆたう哀しくなるほどの風情。
それは、ある年代以上の日本人であれば郷愁を誘われずにいられない、忘れたくない日本の貴重なスケッチの数々なのであり、そのことばにしがたいディスカバリー・ジャパンな映像は、問答無用で心に安らぎをもたらしてくれるものであると同時に、少しオーバーに言えば、日本人としてのアイデンティティを再確認させてくれる、日本に生まれてよかったとしみじみ思わせてくれるものだったりもします。
「高倉さんの夕日を見つめるシーンも、私の草原が舞台だった。今日こそは、すばらしい夕焼け空になるかもしれない。今日こそは、と、この時にも、山田監督は、いくたび私のところへ通いつづけたかわからなかった・・・(中略)・・・四度、五度と、そんなことをくりかえす山田監督が、私には、たまらなく気の毒に思えてくるのを、どうすることもできないのだった」
(玉井裕志著
「萌える大草原」
より)
山田監督と親交のある中標津の酪農家、玉井裕志氏は、北国の厳しい酪農生活の日々をつづったその著書の中で、「遥かなる山の呼び声」のロケ撮影で目のあたりにした、ワンカットの絵作りに込められた山田監督の気迫をそう書き記しています。こうした一文に触れると、一見何気なく見えるローカルな風景に焼き付けられた、不思議なほど胸に滲みる情緒が、その実、何気ないものなどではまったくない、すさまじいエネルギーの注ぎ込まれた、執念の記録であったことに改めて気がつきます。そして、そんなかけがえのない美しい日本と懐かしい日本人の暮らしの記憶を、こうして映画の一場面として半永久的にフィルムに定着させてくれたことに、深く感謝したい気持ちになるのです。
幸福の黄色いハンカチ
(英語名:
The Yellow Handkerchief
)
公開: 1977年
監督: 山田洋次
製作: 名島徹
脚本: 山田洋次、朝間義隆
原作:
「黄色いハンカチ」
(ピート・ハミル)
出演: 高倉健/倍賞千恵子/武田鉄矢/桃井かおり/渥美清/太宰久雄/たこ八郎
音楽: 佐藤勝
撮影: 高羽哲夫
編集: 石井巌
@
2014-10-19
コメント : 11
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[
C
1114
]
mardigrasさん、こんばんは
秋(でしたっけ~笑)の青空に黄色いハンカチ、炭鉱住宅の煙突からたなびく煙。
そんなシーンが残ってる映画です。
あんまり内容のほうは、煙の如くあやふやになってしまいましたが・・・。(汗)
これは風説なので、余り真面目に受け取られても困るのですが、(笑)
この作品、もう一つヒントになったのが有ると僕は思っています。
ご存じでしょうか、1959年ソビエトが作った傑作「誓いの休暇」
戦時中に6日間の一時帰郷を許された少年兵のロードムーヴィーなのですが、その最初のエピソード、
「傷痍軍人の帰郷」をヒントの一つにしたと読んだ事があります。
駅で書いた電報文を握り潰す片足の除隊兵。
「何故?」と聞く少年兵に、
「元々、夫婦仲はそれほど良くなかったんだ、今更、こんな男と暮らすより別のマトモな男と暮らしたほうがいいじゃないか」
20分に満たないエピソードなのですが、これが「幸福の黄色いハンカチ」のヒントだったと何処かで読んだ時、「なるほど」と思いました。
どちらかと言うと、この作品、山田洋次より宮崎駿の方に強い影響が有ったみたいですけど。(笑)
35年前、「駅-STATION」を観て、健さんの足取りのままにローカル線に乗って真冬の増毛へ行きました。
あの映画のままに拡がる鉛色の雪空、荒れる海、貴重な追体験でしたよ。
(これ前に書きましたっけ・・・加齢による記憶喪失でしたら笑って見過ごして下さい(汗))
※瑞牆山>高校時代、8合目辺りまで余裕で飛ばしてたら喰いバテを起こしたのか貧血気味になって、残りを青息吐息で登った苦い記憶あり。(笑)
2014-10-26 23:22
鉦鼓亭
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[
C
1115
] >鉦鼓亭さん
こんばんわ、コメントありがとうございます。
この映画の季節は、、まだ山肌に雪が残る4月、いや5月ですかね~。
「誓いの休暇」、大昔にNHK教育の世界名画劇場でやってたのを観そこなって、以来、観る機会がありません。。そうですか~、この映画がヒントになった、、、という説があるのですね。まったく知りませんでした。これはぜひ観て、確かめてみたいですね。
冬の増毛駅、私も行ったことがあります。正確には3月でしたが、高校を卒業して初めて北海道へ行ったときに足を伸ばしました。網走を初めて訪れて、高倉健の真似をして駅前でラーメンを食べたのも、「遥かなる山の呼び声」の上武佐を訪れたのも、この時の旅行でした。増毛ではちょうど雪が降ってて、風情がありましたね~。確か、駅舎からは出ずに、そのまま折り返した記憶があります。そうそう、どうでもいいことですが留萌で電車待ちしてる間に、パチンコで大負けしたことを思い出しました。笑。
それにしても、高倉健のストイックな佇まいは、凍てつく冬の北海道によく似合います。やっぱり素敵な映画の情景は、旅ごころをそそりますね。
瑞牆山、行かれたことありましたか!実は、、、瑞牆山の帰り道に、ほど近くにある市川崑版の「悪魔の手毬唄」のロケ地を訪れてきました(ロケ地めぐりばかり)。いずれ記事にしようと思いますので、またぜひお越しくださいませ!
2014-10-27 22:37
Mardigras
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[
C
1116
] 幸福の黄色いハンカチ
Mardigrasさん、おはようございます。
久々に来てみたら、高倉健さんのイラストと
”幸福の黄色いハンカチ” 思わず、にんまりしてしまい、夢中になって拝読させてもらいました。
途中青文字の 北の国から 2009探鳥も読ませてもらい(見逃していました!2009年には理解あるお嫁さんがいらっしゃったんですね♪)
ほんとに久しぶりにMardigrasさんワールドを堪能させてもらいました。
つい最近、見つけた雑誌「ロケーション ジャパン」ではあなたが選んだ思い出ロケ地ランキング、発表!!記事が記載されていて、1位は
北の国からの富良野、3位は幸福の黄色いハンカチ・夕張でしたよ。写真もきれいで、ページをめくっていったら、5位のDr.コトー診療所の与那国とコトー先生の姿があったので、すごくうれしかったです。
武田鉄也はあまり好きな人ではなかったんですが、遙かなる山の呼び声、幸福の黄色いハンカチを見たら、好感度抜群のひとになりました。
欽ちゃんがお腹を下したときのシーンは武田さん、笑わせようと張り切って、山田監督に叱られたそうです。普通にやれって、受けようなんて考えるなと、武田鉄也にとっても山田洋次監督との出会いがその後の道を決める大事な出会いだったんですね。
ところで、北海道に行かれたんですね。
私も9月中旬3泊4日の慌ただしい旅でしたが、
富良野、中標津に行ってきました。実はもう4年くらい、毎年、行ってるんです。今年は新千歳空港までは飛行機で、新千歳空港から富良野までは列車で、富良野でレンタカーを借りて、翌日、中標津に向かいました。今年は行ってなかった鳥沼公園に行きましたよ。ぶくぶくの濁った水ではなく(笑)透明度の高い、美しい沼でした。シュウちゃんと純の姿が思い浮かびました。知っていましたか?養老牛温泉のシマフクロウのお宿のご主人は「遥かなる山の呼び声」の競馬シーンで実況中継していた方だってこと。シマフクロウは元気にしていました。写真には撮りませんでしたが、夕食時に来てくれてドキドキしました。今は中標津にすっかり嵌っているんですが、夕張の「想い出ひろば」にも是非行きたいと思いました。記事の更新、楽しみにしています。
2014-11-03 07:10
おりんこ
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[
C
1118
] >おりんこさん
こんにちは、
記事読んでいただいて、それからコメントいただき、ありがとうございます。
欽ちゃんの腹下し場面、すごく自然に面白くて大好きなんですが、そのウラに、そんなエピソードがあったんですね。山田監督、さすがです。
富良野、というか麓郷、相変わらず人気ありますよね。。この夏も人が多くて、驚きました(そういう私も行ってるわけですが)。鳥沼公園、透明でしたか!今回は、スルーしてしまいました。三日月食堂でラーメン食べようと思ったのですが、もうずいぶん前に閉店してたのを知って、残念でした。「北の国から」がらみでは、ニングル・テラスに初めて足を運びました。こちらもにぎわってました。
おりんこさんが4年前に中標津行かれたこと、覚えてます。あれから毎年とはうらやましい。富良野から中標津、けっこうありますよね。でも行けないこともないんですよね。。私も"線"で旅したかったのは山々なんですが、今回は家族連れだったので、自重して、1日だけひとりで山に登らせてもらった以外は、家族サービスに努めてました。
養老牛温泉のシマフクロウのお宿のご主人が「遥かなる山の呼び声」のあの実況者だったことは、確か、記事の中でふれた本に書いてあったように思います。次に北海道へ行くときは、またきっと養老牛に行きたいと思ってます。シマフクロウや山田映画のこと抜きにしても、すごくいいお湯だった覚えがあります。
夕張も、いいですよ。あの、勇作の家並の一列以外、な~んにもなくなってしまってますが、「幸福の黄色いハンカチ」がお好きな方は、青いトタン屋根と旗竿の黄色いハンカチを見たら、きっとぐっとくると思います。
2014-11-04 17:59
Mardigras
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[
C
1123
] まさにこの記事をよんだ日に..
高倉健様の訃報を聞きました.
謹んでご冥福をお祈りします.合掌.
2014-11-19 22:08
きるごあ
URL
編集
[
C
1125
] >きるごあさん
訃報に触れてはじめて、ああ高倉健という俳優は、こんな人もいるから自分も頑張ろうと思える、自分にとっての心の支えだったんだなということに、気づきました。昨日までの見慣れた景色が違って見えるような気さえします。。。健さん、今まで本当にありがとう。
2014-11-21 00:38
Mardigras
URL
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[
C
1126
] 追記
この記事を呼んだ数時間後に訃報に触れたせいでしょうか.
高倉健はきっと夕張で,その後村長さんかなんかになって,引退して,地元の人や倍賞千恵子に看取られながら幸せに旅だったんだろうなぁ..
あるいは大阪府警を定年退職して,同じく引退したアメリカ人の友人と時々会ったりしていたけど,普段無愛想な息子に最後は泣きつかれながら逝ってしまったのだろうか..
八甲田山に行かなきゃよかったのに..
動乱に参加しなきゃよかったのに..
討ち入りなんてしなきゃよかったのに..
などなど夢想していましたが,映画好きのつもりでいたのに,考えてみればあまり高倉健の映画を観ていない..
にも関わらず,これほどぶつけようのない,何ともいいようのない虚脱感を,全く会ったことのない人の訃報に感じるとは,やはり高倉健は偉大なんですね.83歳...早いとは言えないけど..
駄文失礼いたしました.
2014-11-23 04:19
URL
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[
C
1127
] >きるごあさん
私はどうしても、「鉄道員(ぽっぽや)」のラストを思い出して仕方ありませんでした。。。
またあの映画を観るまでは、少し時間がかかりそうです。
映画出演205本、とどこかのニュースに書いてありましたが、私も東映時代の健さんの映画はほとんど観たことありません。今は、これまで敬遠していたヤクザ映画を片っ端から観てみたい、という気持ちになっています。
2014-11-24 00:01
Mardigras
URL
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[
C
1142
] 管理人のみ閲覧できます
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2015-05-31 17:48
編集
[
C
1143
] >鍵コメOさん
ありがとうございます!
まったく気づいてませんでした。録画して見ます!!
2015-05-31 21:09
Mardigras
URL
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[
C
1144
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2015-05-31 21:23
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秋(でしたっけ~笑)の青空に黄色いハンカチ、炭鉱住宅の煙突からたなびく煙。
そんなシーンが残ってる映画です。
あんまり内容のほうは、煙の如くあやふやになってしまいましたが・・・。(汗)
これは風説なので、余り真面目に受け取られても困るのですが、(笑)
この作品、もう一つヒントになったのが有ると僕は思っています。
ご存じでしょうか、1959年ソビエトが作った傑作「誓いの休暇」
戦時中に6日間の一時帰郷を許された少年兵のロードムーヴィーなのですが、その最初のエピソード、
「傷痍軍人の帰郷」をヒントの一つにしたと読んだ事があります。
駅で書いた電報文を握り潰す片足の除隊兵。
「何故?」と聞く少年兵に、
「元々、夫婦仲はそれほど良くなかったんだ、今更、こんな男と暮らすより別のマトモな男と暮らしたほうがいいじゃないか」
20分に満たないエピソードなのですが、これが「幸福の黄色いハンカチ」のヒントだったと何処かで読んだ時、「なるほど」と思いました。
どちらかと言うと、この作品、山田洋次より宮崎駿の方に強い影響が有ったみたいですけど。(笑)
35年前、「駅-STATION」を観て、健さんの足取りのままにローカル線に乗って真冬の増毛へ行きました。
あの映画のままに拡がる鉛色の雪空、荒れる海、貴重な追体験でしたよ。
(これ前に書きましたっけ・・・加齢による記憶喪失でしたら笑って見過ごして下さい(汗))
※瑞牆山>高校時代、8合目辺りまで余裕で飛ばしてたら喰いバテを起こしたのか貧血気味になって、残りを青息吐息で登った苦い記憶あり。(笑)