ビッグ・ウェンズデー(再見)

「ビッグ・ウェンズデー」のイラスト(ジャン=マイケル・ヴィンセント、ウィリアム・カット、ゲイリー・ビジー)

ロガーのみなさん一緒に同じタイミングで映画を観ようという企画、「ブログDEロードショー」。記念すべき第10回目の作品は、ジョン・ミリアスの自伝的青春映画、「ビッグ・ウェンズデー」(1978)。今回のチョイスは、この企画の発案者であり、また幹事役でもある映画鑑賞の記録のmiriさんです。

日曜日に鑑賞したのですが、いや~、何度観ても、いい映画はいい。この映画を初めて観た高校生の頃の気分を思い出し、しばしノスタルジックな思いに浸ってしまいました。これ、私にとってはライフタイム・ベスト・テンのうちの一本。感想と思い入れは、1年半ほど前に書いた紹介記事(「ビッグ・ウェンズデー」)で書き尽くしてしまっていて、ほとんど付け足すこともありませんが、今回観ながら頭に浮かんだこと、思い出したことをいくつか...


*       *       *

映画を彩るサーフィン(と海)の映像がカッコよく、そして美しい。観るたび、ホント、うっとりしてしまいます。私自身は、恐れ多くてサーフィンをやろうなんて思ったことはまったくなく、ただひたすら主人公たちに憧れただけですが、高校の同級生にひとり、サーファーがいて、ただサーフィンをやっているというだけで、畏敬の念を覚えてしまったものです。

映画の舞台は、ロスアンゼルスという設定ですが、ラスト、信じられないような大波の立つ海のロケ地は、オアフ島のノース・ショアにある、サンセット・ビーチ。大学生の頃、ハワイに遊びに行った折に訪れたことがあります。エッジを効かせまくるサーファーたちを横目に、かわいらしくボディボードで遊んでいたのですが、むろん映画ほどではないにしろ、ほかのビーチに比べて圧倒的に波が高く、またなんといっても水流が滅茶苦茶強くて、腰までもない水深の場所でふいに波に足をとられ、凄い勢いで水中をぐるりと一回転させられました。よく、海底で頭を打たずに済んだと思います。映画の中で、ベアーが強い波のことを"ボーン・クラッシャー"と呼んでいましたが、実感として、なんとなくうなずけるところがあったりします。

高校生の頃は、パティ・ダーバンビル演じるサリーが好きで、"夏"と"秋"のジャックとサリーの恋に感情移入してしまったものですが、これが今観ると、"冬"と"春"のマットとペギーの生活観溢れる描写に、ぐっとくるものがあったりします。いまさらながら、ペギーの魅力がわかるようになったというか、コズミック・カフェで、ヒッピー(そして変わってしまった時代)に対してイラついたマットが香炉に水をぶっ掛けたときのリアクションなんて、ホント、いい女だな~と惚れ惚れしてしまいます。

同様に、どんちゃん騒ぎの夜が更け、若者たちが頬を寄せ合い静かに踊る場面。今観ると、恋する若者たちよりも、彼らの様子を柔和な顔で眺めながら、何も言わず、そっとドアを閉めて帰っていくベアーに、よりシンパシーを覚えてしまったりします。

以前にも書いたことですが、この映画、物語をドラマティックに、そしてセンチメンタルに盛り上げるため、強引で無理やりな展開が、けっこう目につきます。しかし、そんないびつさもひっくるめて愛しくて、やはり多感な頃に観て感動した映画に対する思いには、作品の出来不出来を越えた、特別なものがあります。結局、映画を眺めつつ、映画の世界に投影していた当時の自分を振り返っているようなもので、もしこの映画を今になって初めて観たとしたら、おそらくこんなに嵌ることはなかったように思います。

*       *       *

最後に...miriさん、いつも幹事役をありがとうございます。縁のない映画にめぐりあったり、好きな映画を再見したり、そんな映画について、みなさんと感想をシェアしたり、楽しい時間の贈り物をいただいているようです。この企画が、これからもずっと続くといいですね!


ビッグ・ウェンズデー(原題: Big Wednesday
製作国: 米国
公開: 1978年
監督: ジョン・ミリアス
製作総指揮: アレックス・ローズ/タマラ・アセイヴ
製作: バズ・フェイトシャンズ
脚本: ジョン・ミリアス/デニス・アーバーグ
出演: ジャン=マイケル・ヴィンセント/ウィリアム・カット/ゲイリー・ビジー
音楽: バジル・ポールデュリス
撮影: ブルース・サーティーズ
美術: チャールズ・ローゼン 
編集: ロバート・L・ウォルフ


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コメント

[C595] こんばんは☆

mardigrasさん、鑑賞とレビューを有難うございました☆

以前の記事があるので、今回レビュー書かれるのかな~?と、ちょっと気になっていたので、本当に嬉しいです。 イラストも前より人数が増えて、やっぱりこのシーンですよね!!!

>何も言わず、そっとドアを閉めて帰っていくベアーによりシンパシーを覚えてしまったりします。

同じと言っては申し訳ないのかもしれませんが、私は今回、ジャックのお母さんが気になって仕方ありませんでした。ハハハハハ~!

それから、最後の方のお言葉を本当に有難う。
自分が楽しんでやっているので、そんなに言って頂いて、恥ずかしいです♪
そうですね、この企画が続くためにも、mardigrasさんにも選んでいただく順番がヒタヒタと・・・またその節はよろしくお願いいたします。
  • 2010-06-08 19:00
  • miri
  • URL
  • 編集

[C596]

こんにちは。

>彼らの様子を柔和な顔で眺めながら、何も言わず、そっとドアを閉めて帰っていくベアーによりシンパシーを覚えてしまったりします。

ここはわたしも印象に残りました。ベアーのこの顔をみるまで「なんで誰も止めないのかなぁ」と思っていたけれど、大人たちも若い頃は同じだったんでしょうね。わたしの周りにはこういう騒がしいタイプはいないので、きっとあんな騒ぎになったら通報するな~(笑)

それと、miriさんのところのコメントみました。Mardigrasさんにお褒めの言葉を頂けたんだから、これからもっと頑張るしかないですね!
モノクロでも夏の青空が見えるMardigrasさんのイラストはわたしの憧れです。

また来月もブログdeロードショーを楽しみましょうね♪
  • 2010-06-09 11:09
  • 宵乃
  • URL
  • 編集

[C597] >miriさん

そろそろまた観たいな~と思っていたので、お誘いは渡りに船でした。
ありがとうございました!

確かに記事は今回遠慮させていただこうかな~と思っていたんですが、10回記念ですし、それに観たらやっぱり書きたく(描きたく)なってしまいました、はは。このシーンは、やっぱり気分が高揚しますよねぇ!

ジャックのお母さんも、いい味出してますね~。私はいずれ遠からず、魚釣ってきたおじいさんに感情移入するようになりそうです。やっぱりサーフィンよりも釣り(笑)。

それでは私もいまのうちから観たい映画を何か、考えておきますね~。

[C598] >宵乃さん

おお、鋭いご指摘!ベアーのあの微笑みは、きっとそういうことですね!
私は、ほんのちょっぴりだけ身に覚えがあるんですが、でも今の私があんな騒ぎに遭遇したら、ベアーと違って宵乃さんと同様に通報します(笑)。

若者たちがバカ騒ぎしてるのを尻目に、おじさんたちがギターを爪弾きながら、庭の木陰で楽しそうに飲んでるシーンも、大人には大人の楽しみ方があるという感じでほほえましかったです。

あの海、とても素晴らしくて見入ってしまいましたよ~。雲とか波とか、かたちがなくて描くのが難しいのに、ホントお上手ですよね。。。私のイラストに青空を感じていただけたとしたら、、、それは宵乃さんが映画を観て知ってるからです!(きっぱり)

来月も、また今から楽しみですね!

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