「幸福の黄色いハンカチ」を訪ねて

「幸福の黄色いハンカチ」のイラスト(倍賞千恵子)

日の経つのは早いもので、なんとブログの更新が1年半ぶりになってしまいました。というわけで、今さらにもほどがあるのですが、三年前の夏に旅した「『男はつらいよ 寅次郎相合傘』を訪ねて」「『遥かなる山の呼び声』を訪ねて」に続く北海道ロケ地訪問シリーズ三部作の最終回、「『幸福の黄色いハンカチ』を訪ねて」であります。

北海道を舞台にした山田洋次監督、高倉健主演のロードムービー、「幸福の黄色いハンカチ」(1977)。網走で出会った若い男女と中年男が、阿寒、陸別、帯広、新得、砂川そして夕張へ、北の大地を東から西に向かってクルマを走らせていく映画の旅路とは逆に、私のドライブは道南から道東に向かい、そして道南へと戻ってくるものでした。そんなわけで映画とは訪れた順序がまるで異なっているのですが、とりあえず旅の行程に沿って、「幸福の黄色いハンカチ」のロケ地の今(といっても3年前ですが)をご紹介したいと思います。


「幸福の黄色いハンカチ」の想定ルート


「新得」を訪ねて

京を出発して二日目。新潟からフェリーで小樽に上陸し、「男はつらいよ 寅次郎相合傘」(1975)のロケ地を訪ね歩いたことは前々回の記事に書きました。その後、北広島の森林公園でバードウォッチングしたり、クルマのディーラーでリモコンキーの電池を交換したり、恵庭でスープカレーを食べたり、といろいろイベントを挟みながら、東に向かってひた走ること数時間。そうして17時過ぎ、石狩平野と十勝平野の境にある狩勝峠に到着しました。

果たして潰れていたのか、それとも単に定休日だっただけなのか、シャッターを下ろした土産物屋の前の人気のない駐車場にクルマを停め、人気のない見晴らし台に立ってみれば、北の大地の雄大な眺めを独り占め。

狩勝峠は「幸福の黄色いハンカチ」の主人公たちの旅路の想定ルート上にあり、ロケ撮影はされてないものの、高倉健演じるムショ帰りの中年男、勇作と武田鉄矢演じる粗忽な若者、欽ちゃんが、この峠の名前をめぐって会話を交わす場面がありました。

狩勝峠
「帯広通って、あの~、勝狩峠のほう抜けようと思って」「狩勝峠」「狩勝ですか、あれ」

狩勝峠をあとに、長い坂道を下ること20分。陽がそろそろ傾きかけたころ、新得の町に着きましました。カニの食べ過ぎで腹をくだした欽ちゃんに代わってハンドルを握った勇作が、無免許運転で検問中の警官に捕まり、しょっぴかれた先が、狩勝峠からほど近い、この町の警察署。果たして勇作の運命やいかにと思いきや、旧知の警察署長が登場し、勇作は罪に問われることなく放免されます。人情味のある警察署長を演じていたのは、特別出演の渥美清。何度観ても心がほっこりする、中盤の名場面です。

というわけで、是が非でも新得警察署だけは訪れたいと思っていたのですが、残念ながら映画の撮影された頃に町中にあった警察署は、とうの昔に国道沿いに移転してしまっていました。

その一方、新得にはいまだ映画の面影がかろうじて残っている場所もありました。警察署を出た勇作が、彼の過去を知ってしまった欽ちゃんとあけみ(桃井かおり)に別れを告げ、駅を目指して曲がった四つ角が、そこ。空き地だった角には家が建ち、駅舎や周囲の建物の見目も異なっていましたが、ランドスケープや道幅に変わりがないせいか、駅に向かって歩く高倉健の後姿と路肩に駐めた赤いファミリアがまぶたに浮かんでくるようでした。

新得
「まぁ、あれだな...辛いこともあるンだろうけども、辛抱してやれや、え?一生懸命辛抱してやってりゃあ、きっといいこともあるよ」

ちなみに写真の奥に見える根室本線新得駅は、「北の国から 95’秘密」で、夜行列車で根室に帰る蛍(中島朋子)を純(吉岡秀隆)が富良野からクルマで送ってきた場所。二人は列車が到着するまで、ロータリーに停めたクルマの中で会話を交わしていました。この旅の後半で、「北の国から 95’秘密」のロケ地をもう1か所、訪れることになります。


「阿寒温泉」を訪ねて

行三日目。帯広から池田、千代田新水路、豊北トイトッキ、とほとんど思いつきでクルマを走らせ、あちこちでつまみ食いのようにバードウォッチングしながら、最後は阿寒湖の南、国道沿いの「あいおい道の駅」に辿り着きました。ここで車中泊し、四日目は、日本百名山の一つ、雌阿寒岳に登山。

この日、このあたりの気温はゆうに36度を超えていました。そんな夏日の山登りで、しまいには幻覚と幻聴に苛まれるほどに体力を消耗し、最後は水もなくなって、まっすぐ歩けないくらい、へろへろになって下山。そして夕方、温泉で汗を流すつもりで、雌阿寒岳の頂上からもよく見えた、阿寒湖の畔にある阿寒温泉を訪れました。ここは、網走で知り合った欽也たちと耕作が、温泉街の安宿に投宿し、道中、最初の夜を過ごした場所です。

阿寒湖畔
「温泉かぁ...いいなぁ」

思えば阿寒湖を訪れるのは、初めてでした。湖のほとりにクルマを停めて、40年近く前に健さんたちも眺めたであろう夕景の湖畔をしばし逍遥。欽ちゃんがあそこに泊まろう!と言っていた(しかし泊まらなかった)"ゴージャス"なホテルが、湖面の向こうに当時の姿そのままに建っていました。

暗くなる前に、温泉街で見つけた喫茶店に立ち寄り夕食。ビールを飲んでいた、常連客らしい地元の方たちとぽつぽつお話しするうち、一杯誘われて喉がごくりと鳴りましたが、実はこの旅行中、ピロリ菌除菌のクスリを服用中で、アルコールはご法度。潔くあきらめて、すぐそこだよと教えてもらった、激熱にもほどがある公衆温泉でひとっ風呂浴びてさっぱりすると、再びクルマに乗り込んで夜道をひた走り、弟子屈の町に辿り着いたところで、8年前にも訪れたとある公園の駐車場にクルマを停め、前日に続き車中泊。


「美幌峠」を訪ねて

行五日目。朝いちでバードウォッチングを楽しんだのち、北を目指してクルマを走らせ、屈斜路湖を通り過ぎて、美幌峠へ。レストハウスのある駐車場は驚くほど混んでいて、どうやらここは屈指の観光スポットらしい。展望エリアの眼下に広がる、ところどころに島が点在する屈斜路湖のパノラマは、なるほどクッシーがいてもおかしくないと思えるほど雄大で、どこか神秘的な気配を漂わせていました。

屈斜路湖
「おじさーん。写真どうすか、写真!いいじゃないスかいいじゃないスか!」

それにしても、勇作と欽ちゃんが肩を組んで記念写真を撮った場所はどこだろう...と、あちこち行きつ戻りつしながら、映画の場面と同じ岩が転がる場所を一所懸命に探してみましたが、最大の手掛かりとなるはずの美幌峠と書かれた柱は当時と異なる場所に建て替えられてしまったようで、いくら探し回っても、ここに違いないという位置を特定することができませんでした。


「網走刑務所」を訪ねて

幌峠をあとにして、太陽がぎらぎら照りつける中、一路、網走へ。つまり、このあたりは映画の想定ルートを逆に辿っていたことになるのですが、この方角から向かうと、刑務所は網走の中心街に入る手前にあります。

網走刑務所01
「網走なんて見るとこないスね~、刑務所だって別にどーってことないしね」

網走刑務所を訪れるのは、これが二度目。18歳のときに訪れたのが最初でしたが、こんなに駅から遠かったっけ?と思うくらい、記憶の中の距離感とずれがありました。それにしても、雪がないとさっぱり映画の雰囲気が感じられず、というよりカンカン照りの陽ざしの下、何の遮蔽物もないアスファルトの上を歩くのがきつい。30年前、刑務所の前の道は未舗装で、雪と泥でぐちゃぐちゃだった覚えがあります。刑務所の入口には立ち番の人がいて、写真撮影をお願いしたら、けんもほろろに断られたものですが、今回はそもそも人影がありませんでした。

映画の冒頭、健さんはここから刑務所のレンガ塀に沿って国道へと歩いていき、そうして網走川に架かる橋を渡ったところにある駄菓子屋の横のバス停で、久しぶりの"シャバ"にとまどっているかのような硬い表情をしながら、路線バスが来るのを待っていました。

網走刑務所02
「おととい、刑期を終えました。その節はいろいろ、ありがとうございました」

残念ながら駄菓子屋はなくなっていましたが、バス停はまだあって、そして振り返ってみれば、映画で健さんの後ろに見えていたのとほとんど変わらない景色が広がっていました。


「小清水原生花園」を訪ねて

びクルマに乗り込むと、網走からサロマ湖の西岸を北に向かいました。紋別の町を通り過ぎ、オホーツク海に面した人気のないオムサロ原生花園を訪れ、日暮れ近くまで貸し切りバードウォッチング。オホーツク海沿いに、ここまで北上したのは初めてです。その後、紋別まで戻り、寿司屋で最高の海鮮丼を堪能し、またクルマに乗り込んで、西へ35kmばかり行ったところにある滝上町の道の駅「香りの里たきのうえ」に辿り着いたところで、三日連続の車中泊。

旅行六日目の朝は、滝上の町を流れる猪滑川に入渓し、良型のアメマスやニジマス、ヤマメを釣り上げて、もっと下流で釣りをしようとクルマで移動するうちに激しい雷雨になりました。仕方なく釣りを諦め、紋別の町に戻って、「紋別セントラルホテル」というホテルに投宿。ここのカニしゃぶがこの世の食い物で一番うまい、と故・丹波哲郎が語っている雑誌記事のコピーが部屋に置いてあり、そんなものを読んだらいてもたってもいられなくなり、夕食で同じものをオーダー。確かに、口にした瞬間、自然と笑顔になるほど美味でした。これはまた、いつか必ず食べに行かなくてはならない、と思っています。

それにしても、紋別は潮の匂いが強い、いかにも港町という風情のある町でした。雨のせいか、通りには人の姿が少なく寂々として、旅情を強く掻き立てられずにはおかないところがありました。

紋別

旅行七日目も朝から雨で、仕方ないのでホテルの温泉に浸かってゆっくり過ごし、9時過ぎにチェックアウト。再び滝上を訪れてみたものの、川は茶色に濁っていて釣りにならず、前日よりも上流で少しはマシな場所を見つけ、霧雨の中で小さなヤマメを数匹釣ったところでストップフィッシング。

その後、オホーツク海沿いのコムケ湖でバードウォッチングしようと思い立ち、また紋別方面に戻って国道を20kmほど南下したところで左に折れ、細い農道をゆっくりクルマを走らせていたところ、前方から干し草を満載したトラクターがやってきて、さてどうやってすれ違おうか、と思案しながらよく見れば、トラクターは山積みの干し草で運転席が見えない、ということは運転手からもこちらが見えていない、と気づいたときにはもうクラクションを鳴らす間もなく、ああぶつかる!というぎりぎりのところで間一髪ハンドルを切り、道から脇の牧草地に落ちました。

というわけで、なんとか衝突は避けられたものの、あわれ右側の後輪が大きく持ち上がった状態で、絵に描いたようなスタック。「幸福の黄色いハンカチ」でも、ファミリアが路肩から落ちて上がれなくなる場面がありましたが、それどころではない、激しいにもほどがある脱輪です。柔らかい草がクッションになって、幸いにもクルマは無傷。とはいえこんな辺鄙な場所でどうしよう、と真っ青になりましたが――当のトラクターに引っ張り上げてもらい、事なきを得ました。

コムケ湖
「大変だおまえ、これ上がんねーぞ!どーするおまえ!!」(泣)

とまあ、そんなアクシデントを挟み、さらに南下して再び網走の町へ。「男はつらいよ 寅次郎忘れな草」(1971)のロケ地である網走橋に立ち寄り(前々回の記事参照)、それから湯沸湖でバードウォッチングしたのち、夕暮れせまる小清水原生花園に着きました。ここは映画の冒頭、網走駅で知り合った欽ちゃんとあけみが最初に訪れる場所で、その風景は、映画当時とほとんど変わりがありません。

小清水原生花園
「行ってもなンにもないよ。なンにもないとこだよ、あそこ!」

ここで日没までバードウォッチングするつもりだったのですが、人影のみならず鳥影も薄かったので早々に切り上げ、知床の玄関口、斜里へと向かいました。道の駅で夕食をとり、それから斜里岳の麓の町、清里町まで走り、道の駅「パパスランドさっつる」にクルマを停めて車中泊。

そうして八日目は、朝から霧雨がけぶる中、斜里岳登山。アマツバメが飛び交う山頂に立つ頃には陽が射して、雲海の遥か向こうに羅臼岳の頂上がぴょこりと見えました。今回の旅ではあわよくば羅臼岳にも登りたい、と思っていましたが、スケジュール的にも体力的にもちょっと無理そう、とこの時点で諦めました。

斜里岳

下山して、再び「パパスランドさっつる」に立ち寄り、晩ごはんと温泉。地元の野菜がたくさん入ったスープカレーが絶品で、これもいつかまた食べに行かなくてはなりません。この日の夜は、道道摩周湖斜里線を8kmほど南下したところにあるJR釧網本線の緑駅前にクルマを停め、またもや車中泊。そして九日目に中標津へと向かい、「遥かなる山の呼び声」(1980)のロケ地を訪ね歩いたことは、前回の記事に書いた通りです。


「落石」を訪ねて

日目の夕方。別海町にある「民子の牧場」をあとにして、虹別方面で日が暮れるまで釣り。それから根室の春国岱へと向かい、国道沿いの道の駅に辿り着いたところで、三日連続の車中泊。

そして十日目は、早朝から春国岱でバードウォッチング。いきなり駐車場にオジロワシがいて感激しましたが、エゾマツ林へと伸びる遊歩道が数年前の高潮で破壊されており、途中までしか進むことができず、肝心の林(多くの野鳥に出会える)の中に足を踏み入れることができませんでした。

春国岱

その後、根室の町へとクルマを走らせ、前回はパスした明治公園をしばらく歩き回ってみたものの、めぼしい鳥は見られず。モスバーガーで朝食兼昼食を済ませ、こうなったら霧多布だ!と霧多布岬へ向かう途中、太平洋に面した落石の集落に立ち寄りました。ここは、そう、「北の国から 95’秘密」のクライマックスの舞台。妻子ある医者と駆け落ちした蛍に会うため、はるばる富良野からやってきた五郎と純が蛍を待つ食堂、「凧屋食堂」に擬せられた小屋が、まだ残っていました。

凧屋食堂
「蛍ーっ!!いつでも、富良野に帰ってくんだぞーっ!!」

落石をあとにして、霧多布岬へ。ここでのバードウォッチングも今ひとつで、しばらくしたところで潔く切り上げ、岬から西へ少し行ったところにある琵琶瀬展望台の売店に閉店ぎりぎりで飛び込み、いつかまた食べたいと思っていた牡蠣の酒蒸を賞味。それから「男はつらいよ 夜霧にむせぶ寅次郎」(1984)のロケ地、JR根室本線の茶内駅を訪れたことは、前々回の記事に書きました。

その後、茶内からほど近い別寒辺牛川でしばらく釣りしてみたもののまったく釣れず、諦めて釧路へ。針路が西向きになり、いよいよ旅の終わりが近づきつつあることを思いながら、ドライブ。ようやく釧路に着いたのは、もう夜になろうとしている頃で、東京に帰ってすぐに子供の学校のPTAの催しでソフトボール大会が予定されていたため、バッティングセンターを見つけてしばし練習。それから釣具屋に寄ってルアーを補充。なんだかんだでいろいろ忙しい。

その後、街外れのレストランでスープカレーの晩飯を済ませ、一路、帯広へ向かって、海岸沿いに延びる国道を、じゃがいもスープのように濃い海霧の中、前を走る車の赤いテールライトをたよりに、眠気と戦いながら、慎重にクルマを走らせていきました。

そうして帯広の町の北にある音更の道の駅に着いたのは、もう真夜中になろうとしている頃でした。車中泊だらけの駐車場に空いているスペースをどうにか見つけ、いよいよこの旅最後の車中泊。


「夕張」を訪ねて

終日は、釣りをしようと決めていました。十勝平野を流れる札内川で、お昼までニジマスを狙うことにして、良さそうな場所を探しながら、川沿いの道を南下。ようやく川に降りられる場所を見つけ、河原にクルマを停めて釣り開始。これは、と思える場所でルアーを引いてみるものの、反応なし。ただし水は澄んでいて、雰囲気もいい感じ。釣りながら上流へと進んでいき、何度か渡渉するうち、よさそうなトロ場がありました。目を凝らすと良型のニジマスがいて、ルアーを投げ込んでみると、追うそぶりを見せるものの、喰いつくところまではいかず。しつこく倒木に沿って何度かルアーを流すうち、ようやく釣れた、と思ったら大きなウグイでした。

そこから30mほど行った先に、流れがやや緩くなっている場所がありました。ルアーを遠投すると、2投目でドンという重いアタリ。引きの強さは30cmくらいのニジマスかな、と思わせるものでしたが、いざ寄ってきた魚影を見ると、むむ、デカい。そしてこのあたりから、魚が本腰を入れて暴れはじめました。何度かジャンプされ、慌ててドラグを緩めると、ジジジジジと音を立て、みるみる糸が出ていきました。ぐいぐい引っ張られ、障害物のないオープンウォーターとはいえ、油断するとのされてしまいそう。無理をせず、時間を掛けて慎重に寄せ、そうして寄り切ったところでネットを構えてはみたものの、魚体がデカすぎて入らない。仕方がないので、ずるずると岸に引き上げました。魚の口元を見れば、ルアーの3本バリの1本がねじ曲がっていて、けっこうあぶないところだったと冷や汗。サイズを測ってみれば、60cmにちょっと足りない57.5cm。旅の最後で、大物にめぐりあうことができました。

札内川のニジマス

というわけで、これでこの日はもうおなかいっぱいだったのですが、苫小牧港から出る夕方のフェリーまで、まだ時間の余裕がありました。となれば行かずばなるまい、帰り道の途中で最後の寄り道。そう、夕張へ。

前回来たときは、国道から「炭鉱住宅」へのアプローチがよくわからず、街中を行ったり来たりうろうろしたものですが、さすがに今度はすぐにわかりました。映画では、赤いファミリアは町の目抜き通りを走り抜けた後、ぐるりとUターンするようにして来た道を戻り、そうしてこの道へ左折するのですが(前回はファミリアがUターンしていたことに気づいておらず、道の反対側に曲がる道を探していた)。要するに、町中の風景を車窓から見せることで、いよいよ夕張に辿り着いたことをビジュアルでわかりやすく見せるとともに、果たして別れた女はいまも男を待っているのか、ぎゅっと目を閉じ、祈るように手を組む勇作の姿を映し出しながら、クライマックスに向け、緊張感をひたひたと盛り上げているのですね。

夕張(北炭の角)
「踏切越えたわよ。道なりでいいの?」「北炭の、工場の前を大きく左に曲がり、ずーっと上り坂だ...」

映画の会話の通り、夕張本線の踏み切を越え、急坂を上ってすぐに左折。ただし辻の角にあった「北炭」の工場は、もちろんもうありません。その先の坂道も、映画の中では確かにあった人々の生活の息吹は絶えて久しく、道の両脇にはただただ背の高い緑の夏草が生い茂るばかり。そうして「炭鉱住宅」に到着してみれば、駐車場が整備され、土産物や飲物を売る小さな小屋ができていたりもして、8年前に訪れたときと少し様子が違っていましたが、チケット売り場の向こうには、8年前どころか40年も昔の映画と同じ、山ほどの黄色いハンカチが、長屋の青いトタン屋根の上にはためいていました。

夕張(炭鉱住宅)
「おーいよかったなぁ、よかったなぁ!勇さん!勇さん!ほら見てみろ、ほら!!」

入口でお金を払い、その一角だけ残っている「炭鉱住宅」に近づいてみれば、長年風雨に晒され続けてきた長屋の壁や柱の傷みは顕著で、この「名所」もいつまでもつのだろう、と少ししんみり。住宅の中に足を踏み入れると、四方の壁にびっしりと十重二十重に貼りつけられた来訪者のメッセージはもちろん、撮影に使われた赤いマツダファミリアをはじめ、勇作の帽子だったり鞄だったり、映画ゆかりの品々が変わらず飾られていて、懐かしくなりました。とはいえその一方で、以前にあった、出来がよいとはお世辞にも言えなかった、不気味な高倉健と倍賞千恵子の等身大の人形展示がなくなっていたのは、なんだかちょっぴり残念だったのでした。

夕張(赤いファミリア)
「さぁ~出かけよう、ファミリア~♪」

さて、コロナ禍で外に出られなくなったこともあり、ここ2カ月ほどは、これまで観たいと思ってなかなか観られずにいた映画をビデオで観まくっています。あとからあとから映画を観ることができ、これはこれでちょっぴり幸せだったりもするのですが、いよいよ本格的な山と釣りのシーズン到来。夏には外に出られるようになっているといいな、と祈るばかりです。

それでは皆さま、どうかくれぐれも、Stay safe, stay healthy and stay positive!



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コメント

[C1209] お久しぶりです

お元気そうで何よりです。
ロケ地巡りも順調そうですね。まさか映画と同じようなトラブルに見舞われるとは…。お怪我がなくて本当に良かったです。振り返ればいい思い出というやつかな?(笑)

>映画をすき間時間にビデオで観まくっています。

せっかくだし好きなことを目いっぱいやって楽しみたいですよね。きっと免疫アップにも繋がるはず!
早く元の日常が戻ってくるよう祈りながら、お互い今できることをやっていきましょう。
  • 2020-05-05 07:58
  • 宵乃
  • URL
  • 編集

[C1210] >宵乃さん

ご無沙汰しております。いや~、ホント、大変なことになりましたね。こんな時、インドアの楽しみがあるとないとでは、つらさが全く違うんだろうなと思います。映画を観るだけでも楽しいですが、久しぶりにイラストや記事を書いて、これこれ、これも楽しいんだよな~、と改めて思いました。お互い、いい趣味ですよね。笑!
  • 2020-05-06 11:32
  • Mardigras
  • URL
  • 編集

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男はつらいよ 寅次郎忘れな草
男はつらいよ 寅次郎相合い傘
男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花
武蔵野夫人
仁義なき戦い
麻雀放浪記
幸福の黄色いハンカチ
悪魔の手毬唄
夜叉
丹下左膳餘話 百萬兩の壺
姿三四郎
劔岳 点の記
影武者
洋画の紹介
第三の男
ブレードランナー
ゴッドファーザーPARTII
羊たちの沈黙
ミッドナイト・ラン
スカーフェイス
ビッグ・ウェンズデー
ゴッドファーザー
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スティング
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赤ちゃんに乾杯!
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マルホランド・ドライブ
薔薇の名前
リバー・ランズ・スルー・イット
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バック・トゥ・ザ・フューチャー
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バグダッド・カフェ 完全版
未来世紀ブラジル
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恐怖の報酬
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2001年宇宙の旅
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ジュラシック・パーク
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この映画の原作がすごい!(海外編)
この映画の原作がすごい!(国内編)
あの映画のコレが食べたい!
2010年イラスト・カレンダー
「ツィゴイネルワイゼン」を訪ねて
2011年イラスト・カレンダー
続・この映画の原作がすごい!(上)
続・この映画の原作がすごい!(下)
シネマ・イラストレイテッド in TSUTAYA
「劔岳 点の記」を訪ねて
その後のシネマ・イラストレイテッド in TSUTAYA
「夜叉」を訪ねて
「ツィゴイネルワイゼン」を訪ねて(その2)
2014年イラスト・カレンダー
「砂の女」を訪ねて
「悪魔の手毬唄」を訪ねて
「武蔵野夫人」を訪ねて
「岳 -ガク-」を訪ねて
「ゼロの焦点」を訪ねて
「男はつらいよ 寅次郎相合い傘」を訪ねて
「遥かなる山の呼び声」を訪ねて
「幸福の黄色いハンカチ」を訪ねて
「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」を訪ねて
「裏切りのサーカス」を訪ねて
「姿三四郎」を訪ねて
「病院坂の首縊りの家」を訪ねて

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