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[C219] 素晴らしい映画

この映画を最初に観たのはこちらのTV映画劇場でした。
まだドイツ語がよく聞き取れない時期でしたがなぜかぐんぐん惹きつけられ
映画が終わってほっとしました。

それからこの映画はドイツ人が好きらしく視聴率がいいようで
何度もTVで流されそのたびに見たような気がします。
そして今はDVDも持ってるので観たい時にいつでも観れる映画なんですが
DVDではまだ観てないのであなたの記事でまた観てみようと想ってます。

若いイブ・モンタンはなぜかあまり好きにはなれませんでしたが、
50代の時、ロミー・シュナイダーと共演した男女の三角関係を描いた映画で
演じた中年の愛しい男性像は今でも目に焼きついています。

阿佐田哲也(朝だー徹夜)の原作は好きで夢中で読みました。
ドサ健がそんな名台詞をいう映画を見てないので次回の帰国ではこのDVDを買物リストに入れます。

『恐怖の報酬』、まだ見てない多くの人にみて欲しい映画ですよねー
まずはあなたのブログを多くの人に読んで欲しいと想います!

[C220] >淡青さん

ホント、観終わってホッと息を吐きたくなるような映画ですね(特に1回目は)!
この映画の面白さは、文化や価値観の違いを問わず、どこの国の人にもウケるような気がします。

ロミー・シュナイダーとの共演、、、「夕なぎ」ですね。ロミー・シュナイダー好きなので、こっちも大好きな映画です。イブ・モンタンって本職はシャンソン歌手なんですよね...でも1度も歌を聴いたことがないんです(笑)。

私も原作大好きです。この4部作、たぶん、いままでいちばん繰り返し読んだ本...映画の方は鹿賀丈史のドサ健が最高です(高品格の出目徳も加藤健の女衒の達も最高!)。原作のイメージが壊れることはないと思いますので、日本にご帰国の際はぜひぜひ!

先日紹介していただいたせいか、最近少しずつアクセス数が増えてるんですよ。ありがとうございました~!

[C223] フランス映画の最高傑作!

大好きな映画で何度も観ました。

主役のイヴ・モンタンよりシャルル・ヴァネルの中年男の演技に妙に惹かれます。
タール塗れになって、足を折る場面は、大変な撮影だったと思われます。

最後は、報われぬ報酬になりますが、ハンフリー・ボガードの
「黄金」とダブりますね。

舞台も同じメキシコだったと思います。
  • 2009-06-17 01:57
  • harunayamaneko-papa
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[C224] >harunayamaneko-papa さん

こんにちは、papaさんもこの映画お好きなんですね!

シャルル・ヴァネルの、過酷な状況に肉体というよりも気力がついていけなくなるという演技はホント、圧倒的だったと思います。振り返ってみると、彼をめぐるドラマがかなりの部分を占めてる映画ですね。あのタール塗れのシーン、モノクロゆえに血まみれのように見え、異様な迫力がありました。

「黄金」も、同じように汗臭い男たちを描いた傑作でしたね!ほかにも「地下室のメロディ」とか「現金に体を張れ」とか、ギラギラした男たちの映画には皮肉な結末がよく似合います。

[C998]

イヴ・モンタン・・・シャンソン歌手なのに個性派俳優。

彼の「枯葉」のシャンソンは最高でした・・今も時折聴きます・・。

[C1003] Re: タイトルなし

私、歌手としてのイヴ・モンタンを知らないんですよね。俳優としても、それほど観てるわけではないんですが。。。でも「恐怖の報酬」でのハードボイルドな男くささは最高です!
  • 2013-03-24 10:22
  • Mardigras
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恐怖の報酬

冒険のエッセンスが凝縮された傑作スリラー
「恐怖の報酬」のイラスト(シャルル・ヴァネル)

とは――(1)危険をともなうことをあえてすること (2)成功の見込みの少ないことを無理にすること(三省堂「大辞林」より)――。

小説でも映画でも、この、"冒険"という割に合わない行動を主題にした物語の系譜があります。作品によって、"冒険"の中身はさまざまであり、またその舞台設定も多岐にわたりますが、よくできた冒険モノに共通していえること、それは、主人公たちの困難に対する挑戦のプロセスが、この上ないスリルに満ち溢れたものであることです。目的に向かって突き進む彼らの前に、次々と立ち塞がる、困難で危険なハザードの数々。もうダメか、と思われる絶体絶命のピンチ。主人公たちが、これらにどう対峙し、そしてどう乗り越えていくのか、そのスリルにハラハラドキドキ一喜一憂する、というのがこの手の作品のお楽しみどころ――なわけですが、なんといっても、その味付けに欠かせない調味料が、主人公たちをめぐる、人間ドラマのあれこれ。冒険に乗り出す彼らの事情だとか、思惑だとか、危機を前にしての恐れだとか、覚悟だとか、あるいは裏切りだとか、このあたりの描写が綿密で周到なものであればあるほど物語のコクは倍加する、というか、この部分が優れていてこそ、冒険譚は真に面白い――というのがおそらく私だけでなく、この手の物語を愛する人に共通した思いでしょう。

そして、そんな冒険モノのエッセンスを凝縮した映画の傑作が、アンリ=ジョルジュ・クルーゾーの「恐怖の報酬」(1953)。息が詰まるようなスリルと緊張、圧倒的に勝ち味の薄い闘いに挑む人間の強さと弱さを甘味料ゼロの非情なタッチで綴った、ロマンスもなければユーモアもない、ヒリヒリとしたスリルに、観ていてへとへとに疲れてしまう、"冒険"の本質を描き尽くしたといっていい、純度100%、骨太な"冒険ロード・ムービー"です。


「恐怖の報酬」のあらすじ(以降ネタばれ)

ラマの舞台は、中南米のとある国のとある町。あるとき、町から500キロ彼方の油井で、大火災が発生します。石油採掘会社は、火災を爆風で鎮火することを思いつき、大量のニトログリセリンをトラックで陸送するためのドライバーを募集します。町を出てゆく金もなく、することもなく町にたむろっていた食いつめ外国人の流れ者たちの一団が、この、危険極まりない仕事の募集に殺到します。

辺境の町に降って湧いた、千載一遇のチャンスをものにした男たちは、四人。鋏の入った地下鉄の切符をよすがに故国に思いを馳せるフランス人、マリオ(故国から遠く離れたカスバの地で、パリから来た女性に出会い、"メトロの匂いがする"と言ったのは「望郷」(1939)のペペル・モコでした。メトロには、パリジャンの郷愁を掻き立てずにはおかない、何かがあるのでしょうか)。陽気で気のいいお人好し、本来冒険にはとんと縁がないはずの、しかし塵肺で半年の余命と宣言されてしまったイタリア人、ルイジ。危険を潜り抜けてきた過去の栄光が忘れられない、尊大で傲岸不遜な初老のフランス人、ジョー。そして、何を考えているのかわからない、虚無的な匂いを漂わせる国籍不明の男、ビンバ

四人は、ニトログリセリンを山積みにした二台のトラックに分乗し、遥か彼方の油井を目指して旅立ちます。わずかな振動でも爆発する危険物を背負った、一瞬たりとも気の抜けない恐怖の旅。一人2,000ドルという破格の報酬は、まさに"髪も真っ白になってしまうような、"恐怖"の報酬。彼らの行く手に待ち受けるのは、うねるような悪路の連続に、スリッピーな峠道、道を塞ぐ巨大な落石、油送管が破裂してできた重油の真っ黒なプール――と、一難去ってまた一難の絶え間ない極限状況の中、次第に剥き出しとなっていく、それぞれの人間たちの本性。果たして彼らは困難を乗り越え、無事、油井に辿り着くことができるのか――。



常套的なシチュエーションで描かれる極上のスリル

の映画、まず何といっても、いつ爆発するかわからないニトログリセリンを背負って長距離をゆく、という状況設定が素晴らしい。そこに描かれるアクションは、トラックが揺れる、滑る、立ち往生する――と、冒険モノのビジュアルとして、お世辞にも派手なものではありませんが、しかし爆発物の存在によって、それだけ取り上げてみれば何ということはない場面の一瞬一瞬が、実にスリリングなものへと変貌します。

――とまあ、もっともらしいことを書いてみましたが、はっきりいってこの設定、そこらのアクション映画やテレビドラマで何度もお目にかかったことのある、使い古されたネタ。もしかすると、この作品あたりが嚆矢だったりするのかもしれませんが、いずれにしても、そんな、スリルを煽るための常套手段である"ニトログリセリン"に、これっぽっちもチープさを感じないところにこそ、この映画の真骨頂があるといっていいかもしれません。

なぜ、「恐怖の報酬」のニトログリセリンに、安っぽさを感じないのか。それは、ニトロを運ばなくてはならない必然性が、リアリティのある文脈で、きっちりと描かれているから。そして、危険物を背負った主人公たちの恐怖が、リアリティのある演出で、巧みに描かれているから。逆説的な言い方をすれば、追い詰められた主人公たちの、ぎりぎりの精神状態とその行動が、真に迫ったものとして描かれているからこそ、その極限状況の設定に、遡ってリアリズムが宿るというか。要するに、それがニトロであろうと、核爆弾であろうと、猛毒ウィルスであろうと、ドラマにあっては危険物それ自体が重要なのではなく、あくまでそれらをめぐる人間の行動と心理の描かれ方にこそ、サスペンスやスリルが宿る――というわけで、フランスのヒッチコック"の異名をとり、のちに「悪魔のような女」(1955)を撮ったアンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督にとって、この手の演出は、十八番中の十八番だったことでしょう。



冒険のコクを深める前半のドラマ

恐怖の報酬」は、そのシンプルなプロットにもかかわらず、2時間30分とかなりの長尺作品です。映画は、冒険が始まるまでの約1時間、昼間から酒場にたむろする食いつめ外国人たちの気だるく鬱屈した様子を、丹念に描いていきます。そして、この、冗長にも思える前半部分こそが、実は、この映画のコクのキモ。それは、たとえば黒澤明の「七人の侍」(1954)で、1時間半をかけて描かれる、浪人集めのエピソードと同じようなもので、前半でじっくりと描かれる、食いつめ者たちの織り成す人間模様と彼らの詳細な輪郭描写こそが、あとあとのドラマの厚みを二倍、三倍にも膨らませる役割を果たし、ひいてはこの映画の格調を、凡百のスリラーとは比べ物にならない高みへと押し上げる、決定的な要因となっています。


極限状況で剥き出しになっていく、人間の本性

情も性格も異なる四人の男たちが、それぞれの思惑を抱えて乗り出す旅路の構図は、ジョン・フォードの「駅馬車」(1939)に描かれた、インディアンの襲撃に絶えず怯える、運命共同体の乗客たちを思い出させるところがあります。「駅馬車」においても、極限状況に置かれた登場人物たちの真の人間性が、恐怖のもとで否応なしに炙り出されていく様子が描かれていましたが、「恐怖の報酬」に描かれるそれは、それこそ前半でじっくりと描かれた主人公たちのドラマが効いて、「駅馬車」よりも遥かに生々しい。

特に、大人物然とした、傲慢で豪気な初老の男、ジョーの変貌ぶりは、その際たるものです。平時の町では、マリオにとって畏敬の念を覚える存在だったジョーは、人間の精神力の限界を試すような旅によって、そのハッタリの仮面を、情け容赦なく引きはがされてしまいます。報酬それ自体を目的とするだけでなく、自分が危険に生きる男であることを誇示したがっていたジョーは、そもそも選から漏れたにもかかわらず、選ばれた一人をおそらく力ずくで脅し上げ、その代わりとしてメンバーに加わります。

出発にあたって、恐怖に怯える心情を正直に吐露していたマリオに対し、俺がついていると見栄をきっていたジョーは、しかし、旅の冒頭で早くも気力を削り取られ、あっという間に、心がぽっきり折れてしまいます。彼は、何かと理由をつけては休憩したがるようになり、やがて、旅自体を中止しようと言い出します。そして、絶体絶命のピンチに直面すると、とうとうマリオを置き去りにして、その場から逃げ出そうとします。

前半において、嫌な人間っぷりを存分に見せつけていたぶん、臆病風に吹かれたジョーの情けない姿には、溜飲の下がるところがあります。しかし、マリオとの精神的な力関係が逆転してからの、ジョーに対する、老いに鞭打つ容赦も呵責もない描写には、そこまでやるか、というくらいの残酷さが漂います。

そして、ジョーの弱さに反比例するようにして、次第に浮き彫りになっていくのが、マリオという男の非情さ。マリオはもともと、友人であるルイジを生活のために利用したり、彼を愛する酒場女と真情のない関係を続けていたり、とその行動に誠意のなさを感じさせる人物でしたが、切羽詰った極限状況にあって、その人間愛の欠如した利己的な性分は、より露骨なものとなっていきます。

ジョーが感じる恐怖の心理描写もさることながら、この、マリオの振る舞いから立ちのぼる、甘っちょろい感傷を排した非情な空気こそが、「恐怖の報酬」に描かれる極限状況のリアリティを、いっそう強烈なものにしているといっていいでしょう。



極限状況だからこそ生まれる友情

う一方のトラックのコンビ、ルイジとビンバ。ドラマの前半、寡黙で何を考えているのかわからないところのあったビンバは、いくつかの絶体絶命のピンチを通じ、どんな事態にも冷静さを失うことのない、また決して諦めることのない土性骨を持ったマッチョな男であることが、次第に明らかになっていきます。たとえ報酬を手にしても、町を出るつもりはないと云う彼は、四人の中で唯一、金それ自体のためだけに、命を危険に晒す男でもあります。

一方、自らの余命に限りがあることを押し隠し、恐怖の中にあっても決して陽気さを失わないルイジ。マリオにうまいこと利用されていたお人よしであり、また酒場の諍いでは、ジョーに度胸のなさを罵られていたルイジこそが、実は、人間的にもっとも強い男だったということが、その行動を通じ、じわじわと浮かび上がってきます。

生死を共にする旅路を通じ、マリオとジョーの心がバラバラになってしまったのと対照的に、ルイジとビンバの間には、一種の友情が芽生え始めます。それは、ハッタリのきかない修羅場を共に潜り抜けることによって、本来交わるはずもなかった、性格のまったく異なる二人の間に生まれた、嘘いつわりのない、掛け値なしの連帯感です。旅の冒頭では、よそよそしさすら感じられたトラックの運転台に、知らず知らずのうちにハーモニーが漂い始め、こうして、この非情さに満ち溢れた映画の中では珍しい、しかし、これこそ冒険物語の醍醐味といいたくなるような、心にじんわりとくる男同士の友情が、さらりとさりげなく、描かれます。



最後まで決して諦めない精神

道を登りきったルイジとビンバのトラックが遭遇する、道をふさいだ巨大な落石をめぐるエピソードは、この冒険物語の白眉のひとつ。そこに描かれるのは、万事休すに思える困難を前にしても、決して心の折れることのないビンバの不屈の精神と、知恵を働かせた、いわばサバイバル術にも通じる工夫の面白さです。

ビンバは、沈着冷静に大岩の状態を調べると、ニトログリセリンを使って爆破することを決心します。彼は、岩に穴を穿つようルイジに指示を与え、そこらへんにあるものを利用し、一歩間違えればドカンの危険な仕掛け作りを始めます。そこへ、マリオとジョーのトラックが到着します。状況を知ったマリオが手を貸し、息詰まるような作業ののち、大岩は見事、木っ端微塵に吹っ飛びます。

肩を抱き合って大喜びする、ルイジとビンバ、そしてマリオの三人。ジョーの出現によって、仲違いしてしまっていたマリオとルイジのわだかまりは、大岩の爆発とともに、雲散霧消します。そしてそこには、以前の打算ずくなものとは性質の異なる、共に死線を潜り抜けたがゆえの、本物の絆が生まれたかのようでもあります。そんな中、ひとり寂しく、歓喜の蚊帳の外に置かれるジョー。命を賭した冒険の最中にあって、早々と"ブルってしまった""抜け殻"のような彼は、もはや誰からも洟もひっかけられない存在になり果てます。

大岩を乗り越えた直後、上機嫌のビンバは、トラックの助手席で髭を剃りながら、ナチの塩山で働かされていたという過去を、ルイジに語ります。「俺は半分死んだ男だ。ニトロなど軽い」。彼のニヒリズムと強さの理由が、こうして明らかになります。どうして髭を剃るのかと尋ねるルイジに、彼は続けて云います。「たとえ死んでも見苦しい顔を晒したくないからさ」

不吉なことを口にするビンバに、ルイジは、縁起でもないとばかりに表情を曇らせるのですが――。



非情なマリオ

人間的にも思えるマリオの振る舞いとその心理は、絶体絶命のピンチを何が何でも乗り越え、この旅を全うしてみせるという闘争心と表裏一体の関係にあるものです。困難が大きくなればなるほど、そしてそこに感じる恐怖が大きくなればなるほど、彼の非情な性格は、ますます際立っていきます。

危機を乗り越えた達成感と、仲間との連帯に気分よくトラックを操るマリオの横で、ジョーの巻こうとしていたタバコが突然、ふっと吹き飛びます。ハッと行く手を凝視した二人の目に、遥か前方に立ち昇る、巨大な爆煙が映ります。その瞬間、二人(と観客)は、ルイジとビンバのトラックが吹っ飛んだことを悟ります。

危機を乗り越え、すべてが上手くいきそうに思えたとき、ルイジとビンバは何も云い残すこともなく、"見苦しい顔を晒す"ことすら許されず、一瞬にして、この世(とスクリーン)からおさらばしてしまいます。二人の無常な最期に震え上がるジョーの横で、マリオは呟きます。

「結局やつらは負けたのさ」

"負けたやつは裸になる"とは、「麻雀放浪記」(1984)のドサ健の名セリフですが、この映画のルイジとビンバは裸どころか、跡形もなく消し飛んでしまいます。仲間の死を悼むそぶりも見せず、トラックを走らせ続けるマリオ。再び怖気づき、トラックから飛び降りて逃げ出すジョー。後を追ったマリオは、ジョーの顔面に石を投げつけ、とっ捕まえて平手打ちにします。恥も外聞もなく、虐めないでくれと泣きじゃくるジョー。心の折れた負け犬に、どこまでも厳しい、この、非情にもほどがある描写。

*        *        *

再び走り出したトラックは、やがて事故現場にたどり着きます。そこで彼らが見たものは、爆発で抉れた道の大穴に、破裂した送油管から漏れ続ける重油が溜まった、ネバネバの真っ黒なプール。そして、そのほとりポツンと転がる、ビンバの咥えていたパイプ――。

刻々と深さを増す重油のプールを見て、マリオは感傷に浸ることなく、トラックで突っ切る決心をします。重油の中から障害物をどけるようジョーに指示を出し、トラックでプールへと突っ込むマリオ。そのとき、トラックを誘導していたジョーが足を滑らせ、プールの中でひっくり返ってしまいます。沈木に足をとられ、起き上がることができないジョーは、目の前に迫るトラックに叫び声を上げ、トラックを停めるようマリオに哀願します。しかし、スタックすることを恐れたマリオは、トラックを停めようとはせず、歯を食いしばりながら、鬼気迫る形相でトラックを前進させ続け、ぎゅっと目をつぶり、とうとうジョーの足を、沈木もろとも踏みつけていきます。

マリオは、その鉄の意志によって、ジョーの足を乗り越え、ゴールに大きく一歩近づいた代わりに、おそらく、人間としての何かを失います。足を轢かれたジョーは、やがて力尽き、トラックの中で息絶えます。臆病風に吹かれた惨めな老人は、最後の最後まで、これ以上ないくらいに惨めに死んでいきます。そして、目的完遂のためには何事も持さない非情の意志を持ったマリオがただひとり、冒険を生き抜き、"恐怖の報酬"を手にするのです。



かくて冒険は終わる

井にたどりつたマリオが、ふらふらとその場にくずおれるのを見て、石油会社の人々は、それが仲間たちを亡くしたショックのためだと理解します。しかし、マリオがそんな感傷を持ち合わせているはずはありません。なにせ、そのうちの一人は、冒険の成功と引き換えに、自らの意志で死に追いやったようなものなのだから。

ニトロを待ちわびていた人々に、マリオはヒーロー扱いを受けます。ニトロを届けるための旅路がどのようなものであったのか、いったい彼が何をしたのか、もはやそんなことを気にする人は誰もいません。彼は、自らの報酬2,000ドルに加え、ジョーの分け前をも嬉々として受け取ります。

マリオが無事到着したというニュースが町に届き、人々は沸き返ります。マリオを想い、ラジオから流れる「美しき青きドナウ」の調べにのせ、歓喜の表情で踊りまわる、酒場女のリンダ。そして同じラジオを聴きながら、二人分の報酬を懐に、浮かれ気分で帰路に着くマリオ。しかし、マリオの頭にリンダの面影が浮かんでいたかといえば、それは、かなり怪しい。

ワルツの調べにのせ、マリオは右へ左へとハンドルを切ります。山道を蛇行するトラック。そして迎える衝撃のエンディング。カーブを曲がりそこねたトラックは、あっという間に縁石を乗り越え、崖の下へとまっさかさまに転落していきます。大破したトラックの中で、絶命するマリオ。そしてその掌中には、メトロの切符。

無事下山してこそ登山は終わる、と登山家は云います。無事家にたどり着いてこそ冒険は終わる、と冒険家は云います。まるで、マリオに天罰が下されたかのような、このサプライズ・エンディングは、いかにもシニカルで、フランス映画らしい。しかし、全編冒険のエッセンスに満ち溢れたこの映画にあっては、むしろ必然の結末というか、最後の最後まで、冒険の本質を描ききっただけ、と思えたりもします。



恐怖の報酬(原題: Le Salaire de la peur
製作国 : フランス、イタリア
公開: 1952年
監督: アンリ=ジョルジュ・クルーゾー
製作: レイモンド・ボルデリー
脚本: アンリ=ジョルジュ・クルーゾー
原作: ジョルジュ・アルノー(「恐怖の報酬」
出演: イヴ・モンタン/シャルル・ヴァネル/ヴェラ・クルーゾー/フォルコ・ルリ
音楽: ジョルジュ・オーリック
撮影: アルマン・ティラール
編集: マドレーヌ・ギュ/ヘンリ・ルスト


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[C219] 素晴らしい映画

この映画を最初に観たのはこちらのTV映画劇場でした。
まだドイツ語がよく聞き取れない時期でしたがなぜかぐんぐん惹きつけられ
映画が終わってほっとしました。

それからこの映画はドイツ人が好きらしく視聴率がいいようで
何度もTVで流されそのたびに見たような気がします。
そして今はDVDも持ってるので観たい時にいつでも観れる映画なんですが
DVDではまだ観てないのであなたの記事でまた観てみようと想ってます。

若いイブ・モンタンはなぜかあまり好きにはなれませんでしたが、
50代の時、ロミー・シュナイダーと共演した男女の三角関係を描いた映画で
演じた中年の愛しい男性像は今でも目に焼きついています。

阿佐田哲也(朝だー徹夜)の原作は好きで夢中で読みました。
ドサ健がそんな名台詞をいう映画を見てないので次回の帰国ではこのDVDを買物リストに入れます。

『恐怖の報酬』、まだ見てない多くの人にみて欲しい映画ですよねー
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ホント、観終わってホッと息を吐きたくなるような映画ですね(特に1回目は)!
この映画の面白さは、文化や価値観の違いを問わず、どこの国の人にもウケるような気がします。

ロミー・シュナイダーとの共演、、、「夕なぎ」ですね。ロミー・シュナイダー好きなので、こっちも大好きな映画です。イブ・モンタンって本職はシャンソン歌手なんですよね...でも1度も歌を聴いたことがないんです(笑)。

私も原作大好きです。この4部作、たぶん、いままでいちばん繰り返し読んだ本...映画の方は鹿賀丈史のドサ健が最高です(高品格の出目徳も加藤健の女衒の達も最高!)。原作のイメージが壊れることはないと思いますので、日本にご帰国の際はぜひぜひ!

先日紹介していただいたせいか、最近少しずつアクセス数が増えてるんですよ。ありがとうございました~!

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大好きな映画で何度も観ました。

主役のイヴ・モンタンよりシャルル・ヴァネルの中年男の演技に妙に惹かれます。
タール塗れになって、足を折る場面は、大変な撮影だったと思われます。

最後は、報われぬ報酬になりますが、ハンフリー・ボガードの
「黄金」とダブりますね。

舞台も同じメキシコだったと思います。
  • 2009-06-17 01:57
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[C224] >harunayamaneko-papa さん

こんにちは、papaさんもこの映画お好きなんですね!

シャルル・ヴァネルの、過酷な状況に肉体というよりも気力がついていけなくなるという演技はホント、圧倒的だったと思います。振り返ってみると、彼をめぐるドラマがかなりの部分を占めてる映画ですね。あのタール塗れのシーン、モノクロゆえに血まみれのように見え、異様な迫力がありました。

「黄金」も、同じように汗臭い男たちを描いた傑作でしたね!ほかにも「地下室のメロディ」とか「現金に体を張れ」とか、ギラギラした男たちの映画には皮肉な結末がよく似合います。

[C998]

イヴ・モンタン・・・シャンソン歌手なのに個性派俳優。

彼の「枯葉」のシャンソンは最高でした・・今も時折聴きます・・。

[C1003] Re: タイトルなし

私、歌手としてのイヴ・モンタンを知らないんですよね。俳優としても、それほど観てるわけではないんですが。。。でも「恐怖の報酬」でのハードボイルドな男くささは最高です!
  • 2013-03-24 10:22
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黒澤明の「夢」(1990)のロケ地を訪れました。

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「劔岳 点の記」を訪ねて
その後のシネマ・イラストレイテッド in TSUTAYA
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